こんにちは。看護師の奥山美樹です。

前回から期間が空いてしましましたが、今回は『LUTD(下部尿路疾患)に対する食事療法』のセミナーをしていただきました。

「下部尿路疾患」とは膀胱から尿道を通って排泄するまでの間に起こる疾患のことを指します。症状としてはトイレ以外での排尿、頻尿、血尿などがあります。下部尿路疾患の原因はいくつかありますが、犬・猫ともに膀胱炎と尿石症が原因で起こることが多いそうです。

猫の膀胱炎に関しては、原因が特定できない「特発性膀胱炎」と呼ばれるものが6割を占めるそうです。特発性膀胱炎は大きなストレスを受けること、濃い尿であることが原因のひとつなので、対処療法としてはストレスを最小限にすること、水分を摂取して尿量が増えるようにする為の療法食のドライフードやウエットフードを与えたり、ストレスを緩和する栄養素を給与するという方法もあります。

尿路結石にもいくつか種類はありますが、犬・猫ともにストルバイト結石かシュウ酸カルシウム結石が原因になることが多いそうです。ストルバイト結石は尿がアルカリ性に傾いていたり、尿中に結石の材料になってしまうマグネシウムが多く排出されていたり、尿量が少ないことが原因で作られてしまいます。ただ、ストルバイトは酸性の尿中で溶けることがわかっています。なので、尿を酸性に傾けること、マグネシウムの排泄量を減らしてあげること、尿量を増やしてあげるよう専用の療法食や薬を使って管理してあげることで改善していきます。 また、ちょっと意外かもしれませんが、消化率の良い食事であることもポイントになるそうです。というのも、消化率が低い食事だと糞便の量が多くなり、糞便中に水分がとられてしまって尿量が少なくなってしまうからだそうです。

シュウ酸カルシウム結石は残念ながら溶かす事ができないので、外科的に手術するしかありません。ただ、シュウ酸カルシウム結石の場合もストルバイト結石のときと同じように療法食や薬で管理してあげる必要があります。

ちなみに、犬のストルバイト結石は小型犬のメスに多いとの事でした。犬のストルバイト結石症は、細菌感染による尿路感染症を伴っていることが多いそうです。なぜメス犬に多いのかというと、オス犬に比べて尿道が太く短いため細菌が侵入しやすく、細菌が侵入すると尿がアルカリ性に傾いてしまい、結石ができやすい状態になってしまうからだそうです。細菌感染を伴う結石症の場合は、結石の中に細菌が潜んでいるので、結石が消えてから3週間は抗菌剤の薬を飲み続けることが治療のポイントになります。

下部尿路疾患は再発率が高いので、普段の生活で気を付けるポイントを以下にまとめました。

1.療法食だけを与え、おやつはあげないこと。

2.おしっこを我慢させないこと。こまめにトイレに連れて行ってあげたり、トイレを清潔に保つこと、多頭飼育の場合はトイレの数を増やしてあげるのも大事です。

3.水を飲ませる工夫をすること。いつでも新鮮な水が飲めるようにして、水飲み用の容器を何カ所かに置いてあげたり、容器の素材を変えるもの良いそうです。また、トイレの場所と水を飲む場所は離してあげたほうが良いとのことでした。

4.肥満にさせないこと。太ってしまうと運動をしなくなって、水をあまり飲まなかったりなど尿路結石のリスクがあがってしまうそうです。

また、ちょっと気を付けたい所として、ミネラルウォーターがあります。必ずしも尿路疾患になるわけではありませんが、ミネラルウォーターにはカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・カリウムが含まれていて、尿がアルカリ性に傾いてしまう可能性があります。なので、特に尿トラブルがある子に関しては水道水を与えることをお勧めするとの事でした。

下部尿路疾患は正しい食事と生活習慣で再発の予防をしてあげましょう。尿路疾患用の療法食には、それぞれの状態を考慮したフードが数種類あります。気になることがありましたら、ぜひご相談ください!

看護師:奥山美樹