こんにちわ。院長の奥山です。 だいぶ遅くなってしまったのですが、以前、猫免疫不全ウイルス感染症についてブログを書いて欲しいと飼い主様から要望があったので、今回ブログで紹介したいと思います。

【猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症】

ヒトのエイズウイルスと似ているウイルスで、ネコちゃんに免疫不全を発症させる可能性があります。感染したからといってすぐ免疫異常をおこして症状を出すわけではありませんし、進行して必ず免疫不全になるわけでもありません。しかし一度感染するとウイルスを取り除けないので、ネコちゃんにとって非常に重要な感染症です。

<感染経路>

主にネコちゃんどうしの縄張り争いや雌の取り合いによる咬傷によって感染します。ですので、屋外生活のオス猫は感染率が高くなっています。(日本でのFIV感染症の感染率は、最近でも昔とそんなに変わりなく10%前後と考えられています。)(※人に感染する事はありません)

<症状>

最初の感染後すぐは、発熱して元気が無くなったり下痢をしたりとあまり特徴的ではない症状が出ます。この時期は数日から数週間続いておさまってきます。マレではありますが放置すると、この時期に亡くなってしまう子もいます。

続いて、感染していても症状を示さない無症候期に入ります。この期間はネコちゃんによって様々で数ヶ月から数年続きまます。

無症候期のまま生涯過ごすネコちゃんもいますが、一部のネコちゃんは発症に至ります。まず最初に全身性のリンパ節の腫大が見られます。その後進行してくると、免疫異常にともなう症状が出てきます。

主な症状としては、口内炎歯肉炎、上部呼吸器、消化器や皮膚の感染症、貧血などがあります。一部の発症猫には脳炎や腫瘍が見られる事もあります。この中でFIV感染症でよく見られて、生活の質をすごく低下させるのは口内炎歯肉炎です。

※写真は健康なネコちゃんです。

最終的には免疫不全となり、すごく痩せてきたり、血球が減少してきたりして、他の細菌やウイルスに対抗できなくなり亡くなってしまいます。

<診断>

検査キットで血液中のウイルス抗体の有無を調べる事で確定できます。

ですが、生後6ヶ月前の子では母親の抗体の影響があったり、感染してすぐの子では抗体が検出できなかったりするので、場合によっては複数回検査する必要があります。

あとFIVワクチンを打っていると偽陽性で出てしまう事があります。(ワクチンについては後述します。)

<治療>

人では抗エイズウイルス薬もあるのですが、ネコちゃんでは副作用が強くあまり一般的ではありません。

抗ウイルス作用が期待出来るインターフェロンを用いたり、症状に応じた支持療法対症療法を行っていきます。根治を期待するものではなく、あくまでも進行させない、もしくは症状を緩和するという目的で行われます。

FIV感染症はストレスで病態が進行しやすいと言われているので、そしてネコちゃんの一番のストレスは縄張り争いなので、FIV感染症にかかってしまったら、出来たら室内飼いにして、ストレス無く過ごさせてあげれるといいです。

<予防>

すべてのネコちゃんが発症するわけではありませんが、発症すると治療がきわめて困難になるので予防が大切です。

一番の予防は、感染猫との接触を断つために室内飼いにする事です。また外から新しいネコちゃんを迎え入れるときは、検査をしてFIV感染症にかかってないか調べてあげることも大切です。

屋外飼育の子に対しては、雌の取り合いによるケンカで感染する事が多いので、避妊去勢してあげる事も有効です。

FIVワクチンも出て来てはいるのですが、感染予防率が低かったり、一部のウイルス株には無効だったり、またワクチンを打っていると感染の有無を調べる事が困難になるので、まったく効かないわけでは無いですが、まだまだ問題も多いのが実情だと思います。抗ウイルス薬やワクチンは今後の開発に期待したいと個人的には思っています。

感染しても一生、無症候期のままのネコちゃんもいますし、発症しても完全な免疫不全にまで進行しない子もいます。このウイルスに感染したからといって明らかに寿命が短くなるわけではないとの研究もあります。

しかし感染したら、いつか発症するか免疫不全になるか心配になってしまいますし、発症したらネコちゃんの生活の質を著しく低下させてしまうので、病気について正しく知って頂いて、予防、対処していくのが大事だと思っています。

同じくケンカでよく感染して、猫免疫不全ウイルス感染症と一緒に語られる病気として、猫白血病ウイルス感染症があるのですが、長くなってしますので、次回紹介したいと思います。

院長 奥山